近年の終活ブームにより、人生の終わりを良いものにするために、”自分のお葬式はこうしてほしい” ”自分の生きた軌跡を家族に残したい” などと考える方が増えましたね。
そんな中、自分が入るお墓を生きているうちに準備する、「お墓の生前購入」という言葉をよく聞くようになりました。終活を扱うセミナーや雑誌・サイトなどでは、”相続税対策に、お墓をぜひ生前購入しましょう!” などと、講師の方やプランナーの方が謳っています。どういうことなのでしょうか?
相続税とは?
亡くなった方の財産をもらったときにかかる税金のことを相続税といいます。相続税がかかるのは、土地・家屋などの不動産、預貯金、株式、宝石類、調度品など、お金に換算できるすべてのものが財産として相続税の対象となります。
また、借金などのマイナスの財産も相続することになるため、財産よりマイナスが多いなら、相続を放棄(すべて)する事もできます。財産を相続できるのは、たとえば、一家の大黒柱が亡くなった場合、半分の財産を妻が相続し、半分の財産を子供たちで等分に分けることになります。
お墓の生前購入は相続税対策になるのか
財産の中には、社会的な面や感情的な面などから、相続税の対象にはならないものがあります。それが、仏壇や仏具・お墓などの、日常的に礼拝をしており、神や祖先を敬うためのものです。これらは、お金には変えることができないものと考えられているため、相続税はかからないのです。それが、どんなに高価なものであってもです(骨董的な価値があるものは投資の対象となるため相続税がかかる場合があります)。
ですから、亡くなってからお墓などを購入すれば、相続税の対象となる財産の中から費用を捻出しますが、生きてるうちに購入してしまえば、その購入費は相続財産の対象にはならないということです。なので、どっちにしろお墓を買うのなら、生きてるうちに買った方が”得”ですし、”相続税対策”になるということです。
お墓を生前購入する際の注意点
1.ローンで生前購入したお墓は相続税対策できない
相続税の対象とならないのは、生前に購入したお墓だけです。亡くなった後に未払いの代金が残っていれば、結果的に相続人が債務を引き継ぐわけなので、相続税対策はできません。
相続税対策でお墓や仏壇を購入するのなら「払い終わっていること」が大事ですから、「現金一括」というのが一番でしょう。
2.残される人も一緒に選ぶ
自分が亡くなった後管理料を払い続けてくれて、掃除をしてお参りに来てくれる、お墓を管理してくれる人と一緒に選ぶということです。本人が独断で勝手に自分が入るお墓を購入しており、亡くなってから残された人が困るというケースが多いのも事実なのです。
また、誰も知らなければ、購入したお墓ではなく違うお墓に入ることになったり、一定期間が経てば墓を撤去されてしまう場合もあるでしょう。お寺の墓地であったのなら、”知らないうちに寺の檀家にさせられていた”ということだってあるのです。
3.公営墓地は生前に購入ができない
アクセスが良い都市部の公営墓地などでは、お遺骨が無いと予約が出来なくなっていることが多いので確認しておきましょう。
結局は、お墓の生前購入は良いの?
『お墓を生前購入するのは縁起が悪い』などと言う人がいますが、それはまったくの間違いで、お墓を生前購入すると逆に長生きするとも言われていますし、生前のお墓を「寿陵(じゅりょう)」ともいい、仏教の「輪廻転生」の考えに従えば、逆に縁起が良いといわれています。
以上の事をふまえた上で、お墓の生前購入は、
- 相続税対策になる
- 自分の意見をお墓に反映できる
- 残された人に面倒事を残さない
など、多くのメリットがあることがわかります。
「自分が死んだらこんな場所にお墓を建ててほしい」「こんなお墓に入りたい」など、誰しも、自分が理想とするお墓やお墓を建てる場所があると思いますが、生前購入することで、その理想を叶えることができます。
また、お墓を探す・お墓を購入することは、日数も手間も費用もかかります。そのすべての面倒事を自分が生きているうちにやってしまえば、残された人はすでに決まっているお墓にご遺骨を納骨するだけです。それは、残される遺族にとっては、とてもありがたいことなのです。
そう考えると、まわりの方たちに自分の考えを伝え、そしてまわりの考えを聞いたうえで、一緒に進めていけるなら、お墓の生前購入は良い事しかないかもしれませんね。