お墓の名義変更とは?かかる費用や承継者がいない場合についても解説
2020年12月18日
お墓の名義人が亡くなった場合、そのお墓を誰かが引き継ぐには名義変更が必要です。名義変更を怠ってしまうと、お墓の永代使用権が取り消される可能性があります。先祖代々に引き継いできた大切なお墓が意図せずなくなってしまうのは残念なことです。
この記事では名義変更の手順や費用から、お墓の引き継ぐ人がいない場合の対処方法まで詳しくご紹介しています。
お墓の名義変更とは?
お墓には「永代使用権」というものがあり、お墓の名義変更はこの永代使用権を承継することを意味しています。永代使用権は年に一度管理費を納めていれば家族や親族、そしてその子孫が半永久的にお墓を使用することができる権利です。そして、この権利は一般的な相続財産(現金や土地など)のように子が親の財産を等分で相続するようなものではなく、お墓の権利はただ一人に承継されます。
お墓の権利を引き継いだ人物のことを「承継者」と言います。承継者は、今お墓があるお寺や霊園の管理人に対して名義変更を届出なければなりません。なお、承継者は必ずしも故人の親族である必要はありません。特別縁故者として故人の友人など親族以外に承継することが認められています。しかし特別縁故者が名義人になっていることが明らかになっていないと、「ずっと自分達の家族のお墓だと思っていたが、所有者は全然しらない人だった」という事態を招いてしまいます。
承継できる親等の範囲が定められているなど、お寺や霊園では名義変更にまつわる規定が定められている場合がほとんどです。規定に則り、正しく名義変更を行わなかった場合には永代使用権が取り消されることもあるでしょう。お墓を承継する人が明らかになったら、すみやかにお寺や霊園の管理者に確認を取り、確実に名義変更を行いましょう。
お墓の名義変更の流れ
名義変更は、墓地の管理者に申請します。ここでは一般的に必要とされる書類や手続きについてご紹介します。
必要な書類を把握する
お寺や霊園によって必要となる書類は異なりますので、まずは管理者に問い合わせることがおすすめです。以下の4つの書類は、名義変更をほとんどのケースで必要になるので、なるべく早く手元に用意しておくと良いでしょう。
・名義変更届
名義変更をするために必要な詳細を記入し、管理者に届け出ます。お寺や霊園によって書類のフォーマットがそれぞれ異なりますので、管理者指定のものを必ず使用してください。なお、名義変更届は名称が様々で、「変更届出書」や「承継使用申請書」などと呼ばれることもありますので混同しないように注意が必要です。
・永代使用許可証
永代使用権を取得した時に発行される書類です。永代使用権を明らかにした書類ですから、名義変更の際には必ず必要です。ちなみに、紛失していたとしても手数料がかかりますが再発行が可能です。
・戸籍謄本
直前の名義人と承継者の続柄を確認する場合に必要となる書類です。亡くなった名義人の死亡日時が記載されたものと、承継者のものが必要です。
・住民票
承継者の住所を確認するための書類です。本籍地入りの家族全員の入ったものが必要となります。
その他、墓地・霊園によっては以下の書類が必要になります。
・祭祀を主催していたことが確認できる書類(葬儀で喪主をしたことが分かる領収書など)
・承継者との関係がわかる書類
・承継者を指名した遺言書
・承継者が親族以外の時はその理由が分かる書類、親族の同意書
・承継者より墓地の管理の委託を受ける場合はその同意書・承継同意書
管理者に申請する
名義変更の申請は墓地や霊園を管理している管理者に対して行います。境内にお墓を持つ「寺院墓地」はお寺に、市町村が運営する「公営霊園」は市町村役場に、「民間霊園」は管理事務所に名義変更の申請を行います。ちなみに、公営霊園は市町村役場での申請になるのですが、死亡届の提出と名義変更が同じ手続きと勘違いされる方が一定数いるようです。それぞれ別の手続きなので、忘れずに名義変更の申請も行うようにしましょう。
納骨堂の名義変更の場合
納骨堂は「新しい埋葬の形」として浸透しています。納骨堂の本来の意味は、お墓に納めるまでご遺骨を置いておく場所のことですが、比較的管理がしやすいということでお墓の代わりでの利用が増加傾向にあります。納骨堂もお墓と同じように使用者が変われる際には名義変更が必要です。
納骨堂の名義変更手続きは、霊園の場合とほとんど同じ手続きですが、納骨堂では〇回忌以降は合祀され使用権がなくなる場合や、そもそも一代限りの永代供養で名義変更自体できない場合などがありますので注意が必要です。
名義変更にかかる費用
お墓は運営母体別にみると「公営霊園」「民間霊園」「寺院墓地」の三種類に分けられます。
名義変更にかかる費用は墓地によって違いますが、公営が最も安く「約500円~数千円」、民間が比較的高額で「約1万円~」です。寺院墓地で檀家になっている場合は名義変更手数料とは別にお布施を包むこともあります。費用は寺院によって異なりますが「約3千円~1万円」です。
お墓の名義の承継
お墓を承継する人を「祭祀承継者」と呼ぶこともあります。祭祀承継者はお墓を管理するだけでなく、家計図・位牌・仏壇などの祭祀財産を承継し、先祖を祀るための法事・法要の段取りや墓地の管理など、その家の祭祀に関することを担当します。
承継する人は誰にする?
一般的な相続財産であれば法律で定められた相続人が相続するだけですが、お墓の承継となるとそうはいきません。民法によるとお墓の承継は以下のように定められています。
”(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜,祭具及び墳墓の所有権は,前条の規定にかかわらず,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは,その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは,同項の権利を承継すべき者は,家庭裁判所が定める。”
つまり、お墓を承継する人物は
①亡くなった人の指定によって決める。②慣習で決める。③家庭裁判所が決める。
という方法で決まります。承継するのは一人だけ、しかも血縁者でなくても良いということになっています。一般的には長男や長女など子供の誰かが相続することが多いようですが、過去の判例でも承継は「祭祀主催の意思」を重視すべきであるという判決文がでており、特別縁故者にも承継が認められているのです。
一番に参考にするべきとされている「亡くなった人の指定」によって決める方法とは、故人が亡くなる前に話したことや、遺言書などで判断されます。明確であるほど遺族はもめずに済みます。ただし、とくに故人の遺志がない場合でも、代々長男が受け継いでいるというような「慣習」がある場合はそれに従えばよいことも多いです。もしその慣習もないようならば家庭裁判所の判断になるというわけです。先にも説明した通り、お墓は普通の相続財産とは違うので、相続税はかかりませんが、一般に相続放棄することもできないものなので、必ず誰か一人は承継者となる人が指定されます。
もし特別縁故者として親族以外、例えば故人の友人が指定されたときは、名義人はその友人の名前になります。これによって、法律上はこの友人の親族が亡くなったときそのお墓に入ることも可能になります。実際はそのようなことがないように初めに念書を書いてもらうことが多いようです。また墓地によっては、承継者は親族に限定する規定があるところもあるので確認が必要です。
承継するタイミング
お墓の承継は、現使用者の死亡後におこなわれます。なぜなら、お墓は不動産のように転売や譲渡ができないものだからです。まだ現使用者が生存中に承継させてしまうと、転売や譲渡と区別がつかなくなってしまいます。先の民法(祭祀に関する権利の承継)の規定を見ても、生前に承継してはいけないという明確な規定は見当たりませんが、上記のような理由で禁止している墓地がほとんどとなっています。
一般的ではないものの例外として生前に承継できる場合には以下のようなものがあります。
・現使用者の高齢化、被後見開始などから、お墓の適正な管理ができなくなった。
・現使用者が結婚、離縁によって氏が変わり、お墓を管理するものとして適当でなくなった。
・現使用者が帰化し日本国籍を喪失したことでお墓の所有者として適当でなくなった。
しかし、これらのような理由があっても生前承継は認めないとする墓地もあり、基本的には墓地の承継は現使用者の死後おこなわれるものということは理解しましょう。
承継した人は管理料を支払い、檀家を引き継ぐ
お墓を承継すると管理料の支払い、今後お墓の維持管理をすることになります。管理料の支払いが滞ると永代使用権を取り消されてしまいます。この管理料はたとえ区画内に墓石が立っていなくても発生していますので、承継者になったら、支払いをきちんとするようにしましょう。
寺院墓地の場合は多くの場合檀家としての立場も受け継ぐことになります。檀家になると定期的に寄進を求められたり、お布施を支払ったりする必要があります。金額は先代が支払っていた額に倣うのが一般的ですが、いくらかわからないときは遠慮なく寺院に聞いてみるとよいでしょう。最近では檀家にならなくてもお墓を所有できる寺院もありますし、納骨堂の場合は檀家にならなくてもよいところが多いようです。
檀家というと今日ではなかなか馴染みのない言葉に感じる人もいると思いますが、法要の際に日程を優遇してもらえたり、お墓にも手厚い供養をしてもらえたりする利点があります。親族をあつめた法事を執り行う承継者には寺院は頼りになる存在になるはずです。
お墓の承継者がいない場合
お墓は先祖を偲ぶことのできる大切な場所でもあります。そのため、代々承継者を絶やさず未来に託していきたいものではありますが、今日の少子化などからうまくいかないこともあり、承継者が誰もいないお墓がでてきます。その場合どのようにすればよいのでしょうか?
永代供養墓にする場合
永代供養墓とは、承継者にかわって寺院に今後の供養をお願いするというものです。一定期間がすぎるとお骨は共同墓に移転し合祀され、もともとのお墓は撤去されます。お墓を承継しても維持管理が難しい場合や、参拝する人がいなくなることが予想される場合に検討する人が多い方法です。時にこうした方法を「墓じまい」という言い方をすることがあります。墓じまいはお墓を撤去するところは同じですが、その後散骨や自宅供養も含むので、永代供養はそのあとの供養をすべておまかせするというイメージでしょうか。
これまで大切に守ってきたお墓を無縁仏にしてしまうより、未来永劫手厚い供養をしてもらえる永代供養なら、遺族も安心できますね。永代供養の場合、永代供養費のほかにもともとのお墓があった区画は返却するのでその撤去費用がかかります。
無縁仏にする場合
少子化や人口の都市集中による承継者の不在によって、無縁仏になるお墓が増えています。永代使用権のあるお墓でも、承継者がいなくなって管理料が支払われないまま一定期間たつと無縁仏になってしまいます。無縁仏になると無縁墓に移されるので、けっしてお骨が無下に扱われるというわけではありませんが、見知らぬ故人といっしょに供養されることになります。先祖代々守ってきたお墓がそのような最後をむかえるのは悲しいものです。承継者不在や維持管理に困難を感じたら、はやめに永代供養を検討し、よい墓じまいを迎えたいものです。
まとめ
お墓の名義変更はお墓を承継する際に必要なものということがわかりました。ここでは一般的なお話をしましたが、地域や墓地によって慣習や規定はさまざまです。家ごとの慣習や、その場合の必要書類を確認しておきましょう。いくら名義変更は現使用者の死後にしかできないとはいっても、承継者になるであろう人や、お墓を次世代に遺すことになる人は、早いうちから契約内容を確認し、必要になる話し合いをあらかじめしておくと良いかもしれません。特に承継者が不在の場合ははやめに墓じまいの方法を検討することで、先祖はもちろん、自分自身も無縁仏にならずに済みます。
前世代と現世代をつなぎ、故人を偲ぶ場所であるお墓という文化は、今日でも日本人にとって大切なものであることには変わりありません。お墓のことが相続に付随する面倒ごとのようになってしまう前に、きちんと整理して次世代に繋いでいきたいものです。
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