墓石の文字は塗り直しができる?文字が劣化した場合の対処法を解説
2021年2月25日
墓石には、文字の部分に塗装がされていることをご存じでしょうか。塗装は、一般的にペンキが使われているので、周辺環境の影響や、年月の経過によって劣化していきます。塗装が劣化した場合は塗り直す必要があるのですが、このとき必要な作業や道具、手順について理解されている方は少ないでしょう。
今回の記事では、墓石の文字が劣化してきたときの塗り直しの方法についてご紹介します。また、墓石に彫る文字の書体や塗装する色の種類についても解説しているので、併せてご参照ください。
墓石の文字が劣化する原因
墓石の文字が劣化する原因には、日々の紫外線や雨に濡れることによって発生するカビ、風に乗って付着する埃などがあります。以下では、劣化の原因が及ぼす影響についてご紹介します。
紫外線
紫外線とは、太陽光の中で最も短く、目には見えない光のことを指します。お墓が建つ場所の多くは、日当たりが良い傾向にあります。そのため、紫外線を多く浴びる場所でもあるのです。
墓石の文字は繰り返し雨に濡れたり紫外線を浴びたりすると、塗装部分が乾いて非常に剥がれやすい状態になります。また、紫外線は塗装の色褪せを起こす原因にもなります。特に、白御影石の石材では、色褪せによって文字が見えなくなることもあります。
カビやホコリ
墓石の文字部分は、水分が溜まりやすく、カビが発生しやすい場所です。カビが生えることで、塗装部分の変色を引き起こすだけに限らず、放置しておくと墓石全体に影響が及ぶ可能性があります。
また、風に乗って運ばれてくる埃も、しばしば文字部分に付着します。埃が付着することで、汚れやカビの発生につながります。
墓石の文字を塗り直す方法
墓石の文字を塗り直すには、石材店に依頼するか、自分で塗り直すかの2つの方法があります。ただし、自分で塗り直す場合は、作業で必要になる道具を用意しなければなりません。
以下では、墓石の文字を塗り直す方法についてご紹介します。また、自分で塗り直す際に必要な道具についても解説しているので、併せて参考にしてみましょう。
石材店に依頼する
墓石の文字の塗り直しは、非常に手間と労力がかかります。お墓に訪れる機会が少ない方や、塗り直しする時間がない方、綺麗に文字を塗り直したい方は、石材店に依頼するのが良いでしょう。
石材店に依頼する際には、当然ながら費用がかかります。費用の相場は、1万円~3万円が一般的とされています。費用を極端に抑えたいという方以外は石材店に一任することをおすすめします。
自分で塗り直す
石材店に支払う費用を抑えたい方は、自分で塗るという選択肢もあります。しかし、塗り直しに必要な道具と塗料を把握できていないと、自分だけで塗り直しはできません。墓石の文字を塗り直すには、剥離剤、綿棒や歯ブラシ、筆、スクレーパー、柔らかい布とバケツが必要です。以下では、道具ごとの特徴と用途についてご紹介します。
・剥離剤
剥離剤とは、金属やガラスなどに付着した塗料を剥がす薬剤です。古い塗料を剥がすときに使用します。
・綿棒や歯ブラシ
歯ブラシは、墓石の文字を掃除する時に使用します。歯ブラシが入らない場合は、綿棒を使って掃除すると汚れが取りやすいです。
・筆
筆は、文字を塗り直す時に使います。墓石の文字には、大きい文字と小さい文字があるので、それぞれに対応する筆を用意しておきましょう。
・スクレーパー
スクレーパーとは、へら状になった先端に持ち手の柄が付いている工具です。塗料が文字からはみ出したときに使用します。スクレーパーが用意できない場合は、カッターナイフで代用するといいでしょう。
・柔らかい布・バケツ
柔らかい布は、墓石の掃除に使います。水拭き用とから拭き用で、合計6枚程度用意しておくと安心です。から拭き用の布に関しては、糸くずが付着しないようにキッチンペーパーで代用しても良いでしょう。バケツは、墓石を水洗いする時に必要な水を汲んでくるために使います。
・塗料
墓石の文字は、一般的にペンキが使用されています。ペンキには、シリコン系あるいはアクリルシリコン系の合成樹脂を主成分とする「シリコン塗料」、ウレタン系の樹脂を主成分とする「ウレタン塗料」、アクリル樹脂を主成分とする「アクリル塗料」などさまざまな種類があります。墓石の文字に塗るには、天候などによる外的要因に対して耐久力が強い、シリコン塗料を使用すると良いでしょう。
最近では、墓石の文字の塗り直しを自分でされる方のために、墓石文字専用の塗料がホームセンターなどで販売されています。また、ペンキだけではなくスプレータイプや、筆ペンタイプなど塗る方法も多様化しています。
塗り直し作業の流れ
墓石の文字を塗り直すには、作業の流れを理解していなければなりません。流れが理解できていないと、塗り直しの時にかえって汚してしまうリスクもあります。以下では、塗り直し作業の流れを順を追ってご紹介します。
お墓全体を掃除する
墓石の文字を塗り直す前に墓石全体の掃除から行い、次に細かな文字部分の掃除にとりかかります。特に、文字部分の溝は汚れや埃が溜まりやすい場所なので、歯ブラシや綿棒を使って掃除を徹底しましょう。
また、墓石を濡れたままにしておくとカビが生える原因になるので、掃除が終わったら柔らかい布で乾かします。天候が良く、時間に余裕がある方は数時間、日光にさらして乾かすのも良いでしょう。
古い文字色を剥がす
墓石の文字が掃除できたら、落としきれなかった古い塗料を剥離剤を使って落とします。古い塗料を落としていく作業は、塗り直しにおいてもっとも時間がかかり、仕上がりに差が生まれる部分です。古い塗料を残すことは、新しい塗料が剥がれる原因になるので、残さずきれいにしましょう。
剥離剤を使うときは、古い塗装部分のみに付けます。剥離剤は、墓石を傷める原因にもなります。剥離剤を使うのが心配な方は、掃除で塗装が剥がれる部分だけ除去して、剥がれない部分についてはそのままにしておきましょう。
塗料をいれる
墓石の文字に塗料を入れる前は、塗る周囲にガムテープを張って区切ります。ガムテープは、塗り直し作業でなるべく塗料がはみ出ないようにするために使用します。筆を使って塗っていく際、1度の塗りでムラが出てしまう場合は、2度または3度重ね塗りしましょう。
なお、古い塗装を剥がすために剥離剤を使ったときは、すぐ塗り始めてはいけません。剥離剤が墓石に残っていると新しい塗料が付きにくく、綺麗に塗ることが難しくなるためです。剥離剤を使用した際は、乾くまでに数日時間を置いてから塗り直し作業を行うようにしましょう。
塗り直し作業では、塗料が文字部分からはみ出してしまうこともあります。はみ出した塗料については、乾いたことを確認し、スクレーパーあるいはカッターナイフで削り落とします。ただし、スクレーパーやカッターナイフは、先端が刃物なため墓石を傷つける可能性もあります。使用する際は、刃が石と平行になるように文字部分の端に沿って、滑らすように削りましょう。
墓石の文字の種類
墓石に彫る文字は、基本的に書体や文字を塗装する色に制限はありません。最近では、自分が好きな書体や色を入れることが一般的になってきています。ここからは、墓石に彫る文字の書体と塗装する色の種類についてご紹介します。また、地域ごとに人気な色についても解説します。
文字の書体
従来は墓石が縦型のお墓が多かったため、文字も同様に縦書きの毛筆書体が当たり前でした。しかし、最近では、横型や形の変わった洋式風のお墓が増え始めた影響から、書体も多様化し、自分の好きな書体を墓石に彫ってもらう方が増えているようです。
近年は、文字を彫る工具や技術が進歩し、様々な形状の書体を彫ることが可能となりました。また、墓石の文字をシミュレーションできる石材店も増えています。ここでは、墓石の文字でよく使用される書体についてご紹介します。
・楷書体
楷書体は、字を崩さず一画ごと丁寧に書かれた書体です。楷書体は、印鑑やワープロの文字によく使われる一番見慣れた書体で、トメやハネをしっかりと残し、1文字ごとに独立しているため、文字がはっきりと読みやすい特徴があります。
・行書体
行書体は、楷書体の文字をやや崩して、書道の筆のような線の幅にメリハリがある書体です。行書体は、水墨画でよく使われ、楷書体よりも曲線的で温かみある書体なため、文字を彫るのに適しています。ただし、文字が長くなってしまうと読みにくいこともあるので注意しましょう。
・草書体
草書体とは、行書体の文字をさらに崩したもので、早く書くことを目的とした書体です。草書体の「草」は、文章の下書きを意味する草案から由来されているようです。
草書体は、文字を大きく崩すことや文字同士をつなげる特徴があり、解読がとても難しいとされています。また、書く人によって個性が出ることから、幾通りもの書き方があります。
・隷書体
隷書体とは、横長の端正なバランスで平たい形をした書体です。隷書体は、一万円札などの日本銀行券に使われており、波を打つような字体が特徴です。隷書体の歴史は古く、紀元前から続く書体で、墓石の文字に刻むと素朴で古風な雰囲気を醸し出します。
文字の色の種類
墓石の文字の塗装には、はっきりと見えるように白色や黒色を入れる方が多いようです。しかし、文字の塗装の色は、特に決まりがなくどんな色を入れても構いません。ただし、中には意味があって入れている色もあるため、色による意味の違いを理解しておく必要があります。ここでは、墓石の文字の塗装で基本的に使用されている色、珍しい色、何も入れないなど、様々なパターンに分けてご紹介していきます。
・白、黒
白は、墓石の文字の塗装でもっとも使用される色で、彫られた文字をはっきり見せることができるという特徴があります。特に黒御影石や灰色の石材であれば、石とのコントラストが生まれるため、美しく人気があります。ただし、白は汚れが付着すると目立ちやすいというデメリットもあります。
黒は、白と同様によく使用される色です。特徴は、白と違い汚れが目立ちにくいことが挙げられます。白系の石材に塗装すれば、文字もはっきりと見えます。
・赤
墓石の文字を赤色で塗装する、ケースとして2つの場合が存在します。1つは、お墓を建てた方が生存している場合、もう1つは、生前に出家をし、仏様の弟子として修行に励む決意をした誓いのしるしとして、戒名を授かった場合です。
戒名を生前に授かっている方が亡くなったときは、塗装を赤から白に塗り替えますが、授かっていない方は、亡くなった後も塗り替える必要はありません。
・金
金色の塗装は、特定の地域ではよく使われる色です。墓石の文字の塗装に金色の塗装を入れるようになったのは、中国文化の影響が強いようです。黒御影石の石材に金色の塗装をすれば、神々しさと上品さを併せ持つ見た目に仕上がります。
・何も塗らない
墓石の文字の塗装は、何も塗らない選択肢もあります。何も塗らないことを選ぶ方の傾向としては、塗装の塗り直しが面倒な方や、自然な風合いを好む方が多いようです。ただし、白やグレーの石材は、色を入れないと文字が見えづらくなります。
地域によって人気色がある
墓石の文字の塗装は、地域ごとで人気の色に違いがあるようです。以下では、関東、関西、九州の3つの地域から人気の色についてご紹介します。
・関東
関東では、黒色が人気です。関東のお墓の傾向として、全体的に黒で統一されており、シックで落ち着いた雰囲気を醸し出しています。中には黒で統一しているので、あえて色を入れないケースも多いようです。
・関西
関西では、白色が人気です。関西のお墓の傾向は、グレーがかった白御影石に白色で文字を塗装するのが人気のようです。ただし、白色は汚れや塗装の剥がれが目立ちやすいので、こまめに掃除や塗り直しが必要になります。
・九州
九州では金色が人気で、特に長崎県で多く見られます。金色が多い理由は、中国の風習でお盆の時にお金を燃やすことに由来しているようです。江戸時代の鎖国下では、長崎県の出島が海外との貿易港でした。特に中国との貿易が盛んであったことから、墓石にも中国文化が伝わったのではないかといわれています。
まとめ
この記事では、墓石の文字が劣化する原因と、塗装の塗り直し作業の流れ、文字の書体や塗装の色の種類について解説しました。墓石の文字の塗装は、日々の紫外線などの天候による外的要因によって、劣化してしまいます。塗装の塗り直しは、石材店に依頼しないで自分で塗るのであれば、必要になる道具と作業工程を理解していないといけません。塗り直し作業に必要な知識を理解して、見た目の良いお墓を維持していきましょう。
なお、お墓に関するお悩みがある方は、ぜひ和泉家石材店にご相談ください。和泉家石材店は、創業130年の老舗のお墓専門店です。千葉県でナンバーワンの実績を誇り、全国優良石材店の会より技術とサービスにおいて一級品と認定され、省庁や上場企業からも指定店とされています。また、スタッフは、お墓の全般的な知識を有する「お墓ディレクター」の1級・2級を取得しているので、ご要望に合わせて、最適なお墓をお選びいたします。お墓に関するお悩みがある方、お墓の購入を検討されている方は、ぜひ和泉家石材店へご来店ください。