お墓の水受けとは?その他のお墓の部位も解説
2020年12月18日
お墓参りに行った際に、お墓にある楕円形の窪みの存在を不思議に思った方もいるのではないでしょうか。この窪みは水受けと呼ばれています。
この記事では、お墓の水受けの意味と正しい使い方、掃除方法を解説します。また、水受けが無いお墓についても説明し、水受け以外に知っておきたいお墓の部位ついても解説します。
お墓の水受けとは?
ここでは、お墓の水受けの用途や、水受けに水を注ぐ理由について解説していきます。
水をお供えするために存在
水受けは正確には水鉢と呼ばれています。水受けや水鉢は水を故人や先祖にお供えするための器です。水受けは独立しているものと、花立と一体になっているものがあります。水受けに水を注ぐ時は柄杓を使って水を水受けの中になみなみと入れるのが正しい作法です。故人や先祖、仏様にお供えするための水であるため、桶に汲んだ水を直接注いだり、手ですくっていれたり、ペットボトルに入った水を入れたりするのははしたない行為とされます。
水受けに水を注ぐ理由
お墓のお供え物は五供と言い、花、香、浄水、灯燭、飲食を指します。花は花立にお供えする仏花を指し、香は線香の香り、浄水はきれいな水、灯燭はろうそくの灯り、飲食は食べ物のお供え物のことを表します。
仏教の教えでは故人や先祖の霊は現世の人の食べ物を食べません。故人やご先祖様、仏様は香と浄水を食べ物として特に好むとされており、香と浄水を常にお供えするのが五供の中でも特に重要とされています。香と浄水を絶やすと、極楽浄土に行った故人の霊魂が空腹になり、飢餓地獄に堕ちてしまうとされています。水受けの水には故人や先祖の霊が映し出されるとされているので、常に綺麗にしておく必要があります。
水受けの正しい使い方
水受けは用途が分かりにくく誤った使い方をされることが多いものです。ここでは水受けの正しい使い方、注意するべきポイントを2つ紹介します。
香炉として使わない
水受けの役割をよく知らないままろうそく立てや香炉として使う人もいますが、これはあまりよろしくない使い方です。水受けにろうそくのろうがつくと墓石にシミがついてしまい、掃除をしてもなかなか落ちません。また、水受けは窪みが丁度良い深さと広さなので、線香を横に置いて供えたくなりますが、線香を水受けに供えると、線香の灰によって浄水をお供えするべきところが汚れてしまいます。そして、線香の灰も掃除するのが大変です。場合によっては線香の火の熱によって墓石が温度変化を起こし、ひびが入ってしまうこともあります。
水以外の物を入れる際は注意する
水以外のジュースやお酒、お茶をお供えするのも基本的によろしくないことです。お酒を水受けに注いでそのままにしておくと、水受けの部分にカビが生えて黒ずんでしまうことがあります。
また、ジュースも含まれている糖分が水受けの中や周辺をべとつかせ、汚れとして残り、虫や動物が寄ってくる原因になります。
お茶も湯飲みに放置したら茶渋がつくように、水受けの中に入れておくと、墓石に茶渋が残ってしまうため、見栄えが悪くなりますし、掃除するのも大変です。
さらに、お酒やジュースの中の成分が墓石の中に入り込み化学変化を起こして、墓石を傷め、墓石の劣化を早めることにもつながります。お酒やジュースをお供えする場合は浄水を供えた上で、容器に入れた状態でお供えし、お供えが終わったら持ち帰るようにしましょう。
水受けの上にペットボトルやコップを置くのも避けましょう。ペットボトルやコップは
カラスによってつつかれたり、落とされたりして割られることがあるためです。
水受けの掃除方法
水受けは浄水をお供えする大切な場所であり、きれいに保っておく必要があります。ここでは水受けの掃除方法のポイントを2つ説明します。
水を全て抜く
水受けに入っている水はお供え物として入れたものとは限らず、二、三日中に降った雨水が溜まったものであることもあります。雨水には埃が含まれており、赤い水垢を発生させることがあります。お墓参りの際には水受けの中の水を全て抜き、水受けの中についている水垢や汚れを落としておくことをおすすめします。
柔らかい素材を使ってこする
掃除をする際は柔らかめの布や靴ブラシなど、柔らかい素材を使ってこすりましょう。水垢は余程こびりついていない限り、水をつけた靴ブラシや柔らかい布を使うだけでも落ちます。水受けの角の部分は水垢などによって汚れていることが多いので念入りに掃除しましょう。硬いたわしなどでごしごしとこすると、墓石に傷が付いてしまうので注意が必要です。
水受けがないお墓も存在する
浄水をお供えするのに重要な水受けですが、宗派の違いにより水受けがないお墓も存在します。ここでは水受けが無い浄土真宗と神道のお墓について紹介します。
浄土真宗のお墓の場合
浄土真宗の場合は浄水を供えないため水受けはありません。浄土真宗では、人は死後阿弥陀如来によって極楽浄土に導かれるとされています。極楽浄土では八功徳水というありがたい水がこんこんと湧き出ており、飢えや渇きに困ることはない理想郷です。そのため、わざわざ水をお供えする必要はないという考えです。
神道のお墓の場合
神道のお墓には多くの場合、水受けが無い代わりにお供え物を置く供物石が設置されています。浄水は食べ物と一緒に八足台に供えます。神道では香を故人が食べるという仏教の考え方がないため、線香も供えず、香炉がありません。
水受け以外にも知っておきたいお墓の部位
ここでは水受け以外にも知っておきたいお墓の部位について説明します。
外柵
お墓の外柵とは主に墓石や後述するカロートを一周して囲んでいる部分のことを指します。
大きなお墓はカロートと外柵が分かれていますが、小さなお墓は外柵の枠自体がカロートの壁として利用されます。
・外柵の意味と役割
外柵には他の墓地との境界線の役割があります。外柵によって自分たちのお墓であるという感覚を持つことができ、ゴミや雑草などの責任の所在が曖昧でなくなり、トラブルを減らせます。
宗教的には、現世とあの世の結界を表しています。また、外柵にはお墓の土台部分を補強する役割があります。お墓は雨風にさらされ、地面の陥没などを引き起こす可能性がありますが、土台がしっかりしていると地面の陥没などのリスクを減らし、カロートの中のお骨を守ることが出来ます。
カロート
カロートとは、お墓の中にある遺骨を納めるための納骨室のことです。現代のお墓の多くは
地下や半地下にカロートが設置されていることが多く、目にする機会は少ないです。漢字では唐櫃(からひつ)と書き、語源は日本語でかろうと、からうどとされています。
カロートは主にコンクリートで作られることが多いですが、死者を弔う意味と供養の意味をこめて御影石で作られることもあります。
火葬が日本で一般的になったのは昭和後期からで、それまでは亡くなった人は土葬され、その上に墓石が建てられていました。火葬が主流になったあとも遺骨は土に埋められていたため、骨壺は土に還る素材が使われていましたが、のちに骨壺に遺骨を入れ、骨壷をカロートに保存するようになりました。
花立
前述したように仏教には五供という考えがあり、5つのお供え物には花も含まれます。花を風などで倒れないようにしっかりと墓石に固定する花瓶が花立です。花立には錆に強いステンレスや丈夫で長持ちするアルミ合金、安価ですが劣化しやすいプラスチックなどの材質のものがあります。花立と墓石をネジで固定するネジ式、墓石の穴に花立を落とし込む落とし込み式、接着剤で止められている接着式などがあります。
・花立の手入れの仕方
まず、花立を取り外しましょう。細部の汚れまで掃除することが出来ます。柄の長い花立の専用のブラシで花立の底部まで水で洗い、滑りをとりましょう。錆が付いていたら、錆取り剤を使って錆を除去します。強力な錆取り剤は花立を傷めるので、素材に最適な錆取り剤を使用しましょう。
香炉
香炉とは線香を置くための台です。香炉も五供のうちの一つの香を供えるための仏具です。
香は心身を清め、死者の魂を悟りに導くとされています。昔は線香を立てた状態でお供えしていましたが、風によってすぐ消えてしまい、長い時間線香をつけることができませんでした。これらの問題を解消し、線香を寝かせた状態で置けるようにしたのが香炉です。香炉には一般的な横型香炉の他に、古いタイプの立置型香炉、高級感のある宮型香炉、経机香炉などがあります。
・香炉の手入れの仕方
香炉の中を綺麗に拭いて、香炉の中が黄色や黒色に変色している場合は柔らかい素材のスポンジや雑巾で水拭きをします。アミ皿が入っている場合は水洗いをします。
塔婆立
お墓にお経や戒名人名が書いてある細長い木の板のことを卒塔婆といいます。
卒塔婆とはサンスクリット語でストゥーパーが語源で、仏塔を意味します。卒塔婆は五重塔を簡略化したもので、仏教の世界観を表す文字が刻まれています。塔婆立は強風で卒塔婆が倒れたり、卒塔婆が劣化したりするのを防ぐための卒塔婆の台のことを指します。
・塔婆立の手入れの仕方
卒塔婆が一杯だと、塔婆立が強風で倒壊しやすいので、卒塔婆は一杯にならないように古いものから処分しましょう。塔婆立の金具部分のセメントが取れていたり、塔婆立の柱の石と石を接着している目地が割れてしまったりしている場合は石材店に補修を依頼する必要があります。卒塔婆が倒壊して近隣のお墓を壊してしまうと、補修、弁償が必要になることもあります。
墓誌
墓誌はいつ誰が納骨されたかが分かるように、お墓に眠る故人や先祖の戒名、生前の名前、没年月日が刻まれています。墓誌は必ず設置しなければいけないものではありません。大きなお墓や多くの先祖を弔っているお墓には墓誌があることが多いです。墓石に彫刻する場所が無くなったり、墓石の構造上、彫刻できなかったりする場合は墓誌を設置することがあります。
・墓誌・墓碑・墓石の違い
墓誌は埋葬されている人物をわかるようにした石板のことです。墓碑と墓石は同じ意味をさし、お墓参りをするところです。墓碑には故人が生前に行った偉業や遺した言葉が彫刻されるモニュメントとしての意味合いもあります。
・墓誌の手入れの仕方
墓誌も墓石と同じく水洗いが基本です。まず、タオルで拭き掃除をしてから、スポンジで洗浄します。文字の部分は歯ブラシで洗浄すると良いでしょう。
まとめ
この記事では水受けを中心に、お墓のさまざまな部位について、その意味や正しい使い方、掃除方法を解説してきました。お墓の水受けは故人や先祖のための浄水を供える大切なものです。水受けをはじめとしてお墓を正しく使い、きれいに保つことで故人や先祖の供養をしましょう。
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