墓石に戒名を彫る前に知っておきたいことを解説!注意点やよくある疑問も
2021年2月27日
墓石の側面に長い文字が彫られていることを見かけたことはありませんか。この文字は戒名と呼ばれる、故人が亡くなった際に授かる名前のことを指します。戒名については聞いたことがあっても、その基礎知識や、墓石に彫られる意味については理解されていない方も多いでしょう。
そこでこの記事では、墓石に彫る戒名の基礎知識についてご紹介します。また、墓石に彫るときの注意点や、戒名に対してよくある疑問についても解説していきます。
お墓の戒名とは
戒名とは、お釈迦様の教えを守ることを約束した証として、故人に授けられる名前の総称です。古来より日本では、亡くなってから出家すると、故人が極楽浄土に行きやすいという考え方が広まっていました。そのため、亡くなった時には本名である俗名の代わりとして戒名を授け、迷うことなく極楽浄土に旅立てるように祈ることが通例となっています。
古来、戒名は仏教の戒律を守り、仏様の教えに従って生きていく人のみが、授けられていました。しかし、現在の仏式の葬儀では、故人が生前に出家しているかに限らず、戒名を授けることが一般的になっています。
戒名の基礎知識
戒名には、故人が生前に行った貢献度合いによって、位が設けられています。また、宗派によって戒名の違いも存在します。以下では、戒名の基礎知識についてご紹介します。さらに、戒名の費用相場についても解説します。
戒名には位がある
戒名の位は、故人が生前に社会貢献や、寺院への寄付、信仰の深さによって決まります。ただし、仏教の教えでは、戒名に位は存在しないので、壇家であるお寺と相談して、故人の人柄を偲ぶ戒名を付けてもらいましょう。以下では、院号、道号、位号についてご紹介します。
・院号
院号とはもともとは貴族や皇族のみに許されていましたが、現在は寺院に寄与された方に授けられます。院号に準ずるものとしては、寺院の建立者に授けられる「寺号」、医者や芸術家に与えられていた「斎号」などがあります。
・道号
道号とは、中国仏教で元々僧侶に使われていた敬称です。一般的には、戒名の上に付いている別名と考えていいでしょう。ただし、故人が未成年や幼児、この世に生まれてくることができなった子どもには、道号を付けることができません。
・位号
位号とは、戒名の末尾に付けられるものです。従来は、身分によって付けられていましたが、近年は故人の信仰の深さや社会的貢献度によって決まります。一般的に使われる位号は、男性なら信士、女性なら信女になります。
文字数が多いほど位が高い
戒名の文字数は、6文字、9文字、11文字等のパターンがあります。戒名の位が高くなることで、文字数も増えていきます。戒名は、宗派によって文字数が違いますが、基本的に6文字または9文字と考えておくといいでしょう。
宗派によって特徴がある
戒名は、宗派によって付け方に違いがあります。ここでは、宗派ごとによる戒名の違いをご紹介します。
・真言宗
真言宗では、戒名の上に古代インド語を表す梵字の「ア」を入れるケースが多いようです。アには、真言宗で最高の仏である、大日如来の意味があります。故人が小児の場合は、梵字の「カ」を入れます。カには、地蔵菩薩の意味があります。
・天台宗
天台宗は、真言宗と同じく戒名の上に梵字を入れるケースが多いようです。ただし、アではなく、キリークという文字を入れるケースもあるようです。キリークには、阿弥陀如来の意味があります。
・日蓮宗
日蓮宗では、戒名ではなく法号と呼びます。また、日蓮宗の特有としては、寺院へ貢献された方や信仰の深さのある方に、日号と呼ばれるものが授けられるようです。
・浄土宗
浄土宗では、教えを5つの順序で伝える法会「五重相伝」を受けた方にのみ授けられる「誉号」、仏の弟子として生きていくための戒律を授ける「授戒」を受けた方のみに授けられる「空号」があります。
・浄土真宗
浄土真宗では、戒名とは呼ばずに法名と呼ぶようです。さらに、法名の上には、釋(しゃく)という文字が使われています。釋を付けることで、故人が仏の弟子になったという意味を持ち合わせています。
戒名の相場
戒名の費用相場は一般的に20万円~30万円とされていますが、位が高くなるにつれて費用も高額になります。一般的に多く付けられる信士や信女では、10万円~50万円が相場となります。
従来は貴族や武家などの上流階級の方のみが対象とされていた居士や大姉の費用相場は、50万円~80万円程度です。
日蓮宗に限定された戒名である院信士と院信女は、30万円~100万円が費用相場です。位の中で、一番高いとされている院居士と院大姉は、最低でも100万円以上からです。
墓石に戒名を彫刻する方法
墓石に戒名を彫る方法は2種類あります。ここからは、戒名を彫る方法や戒名を彫るタイミング、彫刻する際の費用相場について解説します。
墓石に彫刻する時期
墓石に戒名を彫るタイミングは、納骨式までに済ませておくのが一般的とされています。また、彫刻するタイミングに明確なルールはありません。そのため、気持ちの整理ができていない方は、気持ちの整理ができたタイミングで彫刻してもらうこともできます。
墓石に戒名を彫る流れ
戒名を彫るには、現場彫刻と工場彫刻の2つの方法があります。また、墓石に初めて彫る場合と、追加で彫る場合では、作業の流れが異なります。ここでは、墓石に戒名を彫る作業の流れについてご紹介していきます。
・現場彫刻と工場彫刻
現場彫刻とは、戒名を彫る職人がお墓まで出向いて作業を行うことです。比較的短期間で作業が終わるので、多く行われる方法です。
工場彫刻とは、墓石を石材店まで運んで作業を行うことです。工場彫刻の場合は、完成までに2週間程度を要します。工場彫刻は、墓石を運ぶ際の運搬費、お墓から動かすために性根抜きなどの手続きが必要になります。
・初めて彫るとき
初めて戒名を彫るときは、墓地や霊園によっては、墓石を購入する石材店が指定されているので、事前に確認しましょう。石材店では、彫る文字のデザインや、故人の没年月日、俗名、享年など細かい情報を伝えます。戒名は、お墓の一番上にある竿石の側面に彫っていきます。
・二人目以降彫るとき
新たに亡くなった故人の戒名を石材店に依頼して、彫ってもらいます。ただし、工場彫刻の場合は、お墓から墓石を動かす必要があるため、閉眼供養と開眼供養が必要になります。そのため、僧侶へのお布施も用意しておきましょう。
また、霊園や墓地によっては、指定の石材店でなければ、追加で彫ることができない決まりがある可能性もあります。
戒名彫刻の価格相場
戒名彫刻の費用相場は、1人分で3万円~5万円です。ただし、石材店によって相場は大きく異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。また、工場彫刻の場合は、墓石を運ぶ運搬費等が別途必要です。
戒名彫刻の際の注意点
ここからは、戒名彫刻を依頼する際に注意すべきことについて解説していきます。
誤字脱字に注意
当然ですが、戒名に限らず墓石に彫る文字は、間違えると彫り直しができません。墓石に戒名を彫ってもらうときは必ず、石材店の方と誤字がないかどうか確認しましょう。誤字脱字の確認は、1人で行うと見落とす可能性もあるので、複数人で行うと安心です。
日数に余裕を持つ
墓石に戒名を彫るときは、納骨式までに間に合うように余裕をもって石材店へ依頼しましょう。納骨式の直前に依頼した場合、石材店の都合もあり、戒名の彫刻が間に合わない可能性があります。
よくある戒名に関わる疑問
墓石に戒名を彫る際は、墓石に彫られた文字を消す方法や彫るスペースがないなどの悩みが生じるケースがあります。以下では、戒名に関する疑問についてご紹介します。また、自分で戒名を付けられるのかについての疑問も解説しているので、併せてご参照ください。
彫刻した文字は消せる?
戒名を消すには、石材を取り換える、文字を削り直す、彫った部分を埋めるという3つの方法が挙げられます。それぞれの方法を詳しくご紹介します。
・石材を取り替える
まず、戒名が彫られている竿石の石材を取り換える方法があります。ただし、竿石は高額であるため、数十万円~数百万円がかかる場合もあります。
・文字を削り直す
墓石を工場に移送し、彫刻部分を削り磨き上げてからお墓に戻す方法です。費用相場は、10万円~50万円程度です。ただし、彫刻部分の深さによって削る量が増えてしまうと、費用も高それに応じて変動します。
・彫った文字を埋める
消したい文字だけをパテを使って埋める方法です。費用相場は、1文字数万円程度と比較的安価で済ませられます。ただし、消したい文字数の多さに比例して、費用がかかります。
墓石が戒名でいっぱいになってしまったら?
戒名は本来、竿石の側面に彫ります。しかし、先祖代々から受け継がれているお墓の場合は、新しく戒名を彫るスペースがないケースがあります。そのような場合は墓誌を建てることがおすすめです。
墓誌とは、お墓の横に建てる石碑のことです。一般的な墓誌には、20名程度の戒名を彫ることができます。墓誌は竿石とは違い、あくまでお墓に眠る故人の記録帳にすぎないので、閉眼供養や開眼供養は必要ありません。ただし、墓誌の建立は、それなりのスペースを確保する必要があるので、お墓の土地の広さをよく考えておきましょう。墓誌を建立する費用相場は、文字を彫刻する費用と合わせて十数万円から50万円が相場です。
まとめ
この記事では、戒名の基礎知識と、墓石に彫る流れや注意点についてご紹介しました。戒名は、故人が生前の社会的貢献度と寺院に対する貢献度の高さによって、位が上がり、文字も長くなります。また、彫る文字を間違えた場合、修正する方法も存在しますが、それなりの費用もかかるため、よく確認してから依頼しましょう。
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