仏教でお墓に供えるしきびってどんな植物?供える理由やよくある疑問を解説

2021年2月24日

お墓参りに行くと、お花と一緒に青々とした木の葉を付けた植物がお供えされていることがあります。供花である菊や百合はすぐわかっても、この植物の名前はパッと浮かんでこないのではないでしょうか。
これは「しきび」といいます。花ではありませんが、古くから仏花・供花として葬儀に用いられ、日本の古い書物にも、たびたび記述が見られる由緒正しい植物です。今回はしきびの持つ、さまざまな意味や由来について解説していきます。




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お墓に供えるしきびとは?


しきびは古くから葬儀やお墓に供える供花として用いられてきました。なぜお墓に供えるかを解説する前に、しきびの特徴や名前の由来、仏教とのつながりから見ていきましょう。

分布

しきびは仏教を伝来した鑑真が日本に渡る際に、唐から持ち込んだという伝聞があります。実際、しきびは中国・台湾・韓国にも広く分布しています。
日本でも、本州なら宮城県や石川県から西の地域、また、四国・九州・沖縄と広範囲にかけて分布しており、温暖な地方の山地で見かけることができます。

特徴

しきびは、一年を通して緑の葉をつける常緑小高木です。冬でも雪山でも青々と茂る葉っぱは不変や永遠といった言葉を連想させます。
また、独特な強い香りがあります。この特徴から「香の花」「香の木」とも呼ばれ、古くからは「枕草子」でその香りが賞賛されています。どんな匂いかは、しきびの樹皮と葉を乾燥させたものが「お線香」や「抹香」になるといえば分かりやすいかもしれません。

見た目・香りが良い一方で、しきびには毒があります。葉っぱをはじめ、花や実にも毒があり、特に実は誤って食べてしまうと、死亡する危険があるほど強い毒性があります。そのため、子供やペットの誤食への配慮から、お供えに用いる際は造花を使う場合もあるようです。

ちなみに、しきびと見た目がそっくりなトウシキミという植物があり、中華料理の香辛料に使われています。こちらは、無毒なので誤解がないようにしましょう。

名前の由来

複数の特徴をもつためか、しきびにはさまざまな呼び方や名前の由来があります。先に述べた別名である「香の花」「香の木」も、良い香りがするという特徴から付けられたものです。

常緑樹としての特徴を捉えた説としては、四季を通して美しい葉をつけることから、四季・美の文字から「しきび」「しきみ(樒)」となった説などがあります。また、強い毒の実を持つことから「悪しき実」と呼ばれ、やがて「悪」が省略され「しきみ」となったという説もあります。

仏教とのつながり

日本の二大宗教といえば神道と仏教ですが、しきびは仏教との関わりが深い植物です。しきびは仏さまがいらっしゃる天竺に咲いているとされている青蓮華の葉っぱとよく似た葉っぱを持つといわれています。

この青蓮華は、仏さまや菩薩さまの瞳を例える表現として用いられており、仏教において古くから神聖視されてきました。そのため、天竺の青蓮華の葉っぱに似ているしきびの葉っぱも、お供え物にふさわしいと考えられるようになったようです。

このような由来から、お供え物の他にも仏壇など仏具の材料として用いられることも多く、しきびは古くから仏教を象徴する植物の一つでした。しきびを原材料とする抹香の匂いが、良くも悪くも仏教を連想させることから生まれた「抹香臭い」という言葉などは、その最たる例といえるのではないでしょうか。



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お墓にしきびを供える理由


仏教におけるお供え物のルーツは、お釈迦様のお亡くなりになる際に、緑の葉を手むけたことが始まりとされています。この手向けの緑の葉は当初、どんな植物の葉を使うか指定されていなかったのですが、年が経つにつれ「仏教との関わりの深さ」「お墓を守る有用性」からしきびが用いられるようになりました。
ここからは、しきびがお供え物として重宝されている理由について説明していきます。

お清めの役割

しきびには、お清めや悪霊退散の力があるとされています。そのように評価されるに至った理由はさまざまですが、宗教的にはしきびの香りが「お香」を焚くのと同様の効果があるからだと言われています。

お香の代わりになる

宗教においてお香を焚くということは死者を慰撫したり、神仏を迎え入れたり、悪霊を払ったりする意味合いがあります。
仏教でも香を焚く「香供養」は欠かせない儀式です。お仏壇に線香をあげたり、抹香を使ってご焼香をあげたりすることからもイメージしやすいでしょう。線香と抹香の意味はほぼ同義です。両者には良い香りを嗅ぐことで自分自身を清める意味と、亡くなった人が食べ物に困らないようにと願う「食香」の意味があります。
その儀式に用いられる線香や抹香がしきびを原材料として使っているのは、先に述べたとおりです。日本において、しきびはお香の原材料として使える唯一の木でした。そもそもお香の原材料なのですから、お香の代わりになるというのも頷ける話です。また、実際にその香りがお墓を守るのに効果的であったことも、しきびが「魔除けの香」の代わりになると信じられてきた理由の一つでしょう。

虫よけになる

宗教的な意味合いを抜きにしても、しきびの香りには実用的な側面があります。しきびの強い香りは死臭を隠せるほか、虫除けの成分も含まれていました。そのため、しきびは、害虫からお墓を守るのにも重宝されてきました。

動物よけになる

香りだけでなく、しきびの毒も死者を守るのに有効でした。今でこそ世界一の火葬大国である日本ですが、火葬の習慣が浸透し始めたのは12世紀の鎌倉時代になってからです。火葬が土葬の割合を上回ったとされる1950年代だといわれています。
火葬は仏教とともに伝来した説が有力とされており、仏教における火葬の習慣は、教祖であるお釈迦様が火葬であったためと伝えられています。そのため、古来より仏教徒にとって、葬儀はお釈迦様に倣う火葬が良いとされていました。

しかし、現代のように設備が整っていない時代において、大量の燃料を必要とする火葬が行えたのはごく一部の上級階級だけでした。そのため、近代になるまで、仏教徒でもあっても、葬儀で遺体を焼かずに土葬するというのは珍しいことではありませんでした。
土葬するとなると動物が遺体を掘り起こしてしまう危険性があります。その点、しきびをお供え物として用いれば、香りと毒が動物を寄せ付けませんでした。宗教的な意味合いとお墓を守る実用性、しきびはその両方を兼ね備えていたわけです。



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しきびを供える仏事


仏事でしきびを供える場面は幾つかあります。これを大別すると「臨終のとき」「葬儀のとき」「お墓に供えるとき」の3つに分けることができるでしょう。ここからは、しきびを供える場面について紹介していきます。

臨終のとき

日本では古くから、臨終を迎える方の口に水を含ませる「死に水」の儀式が続けられてきました。現代では亡くなった直後、つまり故人に対し行うことが一般的ですが、死に水の儀式は今でも続けられています。

故人の口を水で湿らせる際は、水を含ませた脱脂綿など用いることが多いですが、関西を中心に、地方によっては水を張った椀に浮かべておいたしきびの葉を使うことがあります。理由としては樒に水を浄化する作用があることと、仏教で重要視されているからだと考えられます。

ちなみに、仏教だけはなく神道でも死に水を取りますが、意味合いは異なります。神道は死の穢れを水で清めることを目的とする一方、仏教は故人の渇きを癒す手向けとして末期の水を与えます。

また、しきびは、故人のご遺体を安置する際に置く枕飾りの「一本花」にも使われます。身近で手に入りやすく、青蓮華を連想させるのが理由です。このように仏事に多く使われることから、しきびには「仏前草」という別名もあります。

葬儀のとき

関西では、今でも葬儀場のしきびを飾る風習が根強く残っています。葬儀では会場入り口に「門樒(かどしきみ)」、祭壇の両脇後ろに「二天樒(にてんしきみ)」を飾ります。これには、葬儀場を邪気から守るための結界を張る、という意味が込められています。関西においてしきびは花より丁寧なお供え物とされており、参列者も供花・花輪より門樒を並べることが好まれます。関西ではしきびは葬儀に欠かせないもので、墓地ではしきびの束が一年中売られているほどです。

また、納棺の際、しきびを棺に敷き詰められることもあります。これは、しきびの強い香りが死臭を隠すのに加え、虫除けになることで防腐剤の役割を果たしていたからです。現代ではドライアイスが主流ですが、関西の一部地域では今でもしきびを利用している地域があるようです。

お墓に備える

お墓にしきびを供える理由は先述したとおりです。仏教においてしきびは、お清めの香として悪霊を払う効果があるとされてきました。また、土葬の習慣が残っていた時代において、しきびの植物としての特徴は、虫や動物からお墓を守る効果がありました。しきびを供えるのは、仏教的なご利益と、土葬の名残といえます。
火葬が主流となってお墓を守る実用性は失われてしまいましたが、宗教的な意味合いがあることは変わりません。それだけに、しきびが「仏教」のお供え物であることを忘れないようにしたいところです。



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しきびにまつわる疑問


ここからは、しきびに関わるよくある疑問として、板樒(いたしきみ)・紙樒(かみしきみ)が登場するに至った背景、榊(さかき)としきみの違いについてご紹介していきます。

板樒・紙樒とは?

板樒・紙樒は、受付で決められた金額を支払うことで、木の板や紙に参列者の氏名・所属を書いて葬式会場に入口付近に掲示する風習です。
本来、これらの掲示は門樒の役割でした。しかし、門樒はスペースを取るため、最近では簡単に設置することができなくなりました。
近年において葬式の会場は、葬儀会場や地元の集会場が大多数を占めています。これらの施設は、近隣の方々とのトラブルを避けるため門樒をはじめとする表飾りの使用を禁止する規約を定めているところがほとんどです。
そんな中、考え出されたのが板樒・紙樒です。文字通り、紙や板で作られているので場所も取らず、費用も抑えられます。近隣の方にも迷惑をかける心配がなく、当家の負担軽減にもつながることから、今では門樒より板樒・紙樒の方が主流となっています。

榊(さかき)とどう違うの?

榊という植物は「同じ常緑小高木で見た目がよく似ている」、「どちらもお墓参りや葬儀に使われる」といったしきびとの共通点があります。ただし、しきびが仏教で重く用いられているのに対し、榊は神道で多く用いられます。例えば、ニュースで日本の政治家が神社に「玉串料」を奉納したことが報道されることがありますが、この玉串とは榊の枝のことです。
どちらの宗教だから供えてはいけないというわけではありませんが、「しきびは仏教」「榊は神道」で使用するのが一般的です。



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まとめ


この記事では、しきびという植物の概要について、しきびを供える理由、そしてどのような場面で使用されるのかを解説してきました。しきびが古来より仏教を通じて、私たちに身近な植物であったことがよくわかりました。しきびを見かけた際には、ご紹介した内容をふまえ、より厳かな気持ちでお墓参りや仏事に臨みましょう。

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